2023/12/26
ペット保管業の実務経験資格の取得方法別メリットデメリット
未経験の方がペットホテルを開業するにあたりネックになってくるのが「実務経験」です。
半年間の実務経験を、どこで積むかで開業時のサービスの質が大きく変わってきます。
実務経験の資格を得るには、どんな方法があるでしょうか?
メリット、デメリットと併せて書いていきます。
①アルバイトとして働く
まず多くの方が思いつくのは、ペットホテルなどでアルバイトとして半年間働くことです。
実務経験は、同種別の施設で半年間フルタイムで働くことなので、ペットサロンや、ホテル併設のショップや病院などでも資格を得ることができます。
この方法は、毎月給料をもらいながら研修を受けられるので、手元資金がない人にはメリットです。
ただし、受け入れ先が少ないというデメリットがあります。
ペット業は今でも人気職種ですし、動物関係の専門学校も充実しているので、そういったところで勉強している人が優先的に雇われる傾向にあり、未経験の求人は少ないです。
しかも、半年間限定となるとさらに間口が狭くなります。
ただでさえ未経験で仕事ができない上、仕事を覚えたころに辞めることが分かっている人をスタッフとして迎え入れるお店は少ないでしょう。
気が強い人は、半年で辞めることをを黙って入社することを思いつくかもしれませんが、これもあまりおススメできません。
実務経験の証明には、お店に証明書を書いてもらう必要があるため、半年たって「辞めます、実務証明書書いてください」といった時点で、半年間で辞めることを黙っていたことはばれてしまいます。そうなった時に、実務証明書を書きたくないと言われたら、せっかくの半年の経験が無駄になってしまいます。
実務経験証明を書かなければならない決まりはないので、お店のとの関係を悪くしたらもうどうしようもありません(実際そういったケースでご相談に来た方がいました)。
また、実務研修において、自身の望むスキルが得られないケースもあります。
例えば、自分はフリータイプのペットホテルを開業するにもかかわらず、ケージタイプのお店で実務研修を行ったとします。ケージタイプでは、犬のお世話をするものの、それはケージに入った1頭ずつです。フリータイプで最も必要な「複数のワンちゃんを同一スペースで管理するスキル」を得ることができません。
自分がやりたい形態と同じタイプのお店でないと資格は得られたけど、スキルを何も得られないケースがあります。
開業はできるかもしれませんが、開業直後に高いサービスを提供できない可能性があります。
もちろんお店を経営するうちにスキルは上がってくるとは思いますが、開業直後に来てくれたお客様の評判が良くないと、後々の営業にも悪影響があるかもしれません。
②ボランティアで経験を積む
求人が少ないという点での対処法として、ボランティア(無給)でお店の仕事を手伝うという選択肢があります。
実務経験の取得については、給与の支払いがあるかどうかは無関係なので、半年間フルタイムでボランティア作業を行えば認定がもらえます。
これは、実習を積むお店側にとっては、あなたの経験が未熟でも、給料を払わなくて済むので、受け入れてくれる施設は増えると思います。
また、受け入れてくれる施設にはよりますが、暇なときであれば色々な体験をさせてくれるかもしれません。
ただ一つのデメリットは、半年間完全に無給になることと、①と同様の課題は同じということです。
③お金を払って研修を受ける
ペットホテルの開業に際して、最もおススメできる実務経験の取得方法は、お金を払って研修を受ける方法です。
これは、もともとの契約が半年なので、短期間だからと断られることもありませんし、辞めるときも間違いなく実務証明書がもらえます。
さらにお金を払っての研修のため、ペットホテルの開業に向けた教育をしっかり行ってくれます。
こういったサービスを行っているとところは少なく、自宅近くに研修施設がない場合は、仮住まいの費用が発生すること、研修施設によっては、研修中の給与が出る場合と出ない場合があるので、この点では注意が必要です。
ただ、金銭面のデメリットを除けば、ペットホテル開業に際して一番スキルと経験を得られるのがこの方法です。
「半年間のフルタイム」の明確な定義
実務経験資格に関して、半年間のフルタイム勤務と言われたときに疑問を持たれた方もいるのではないでしょうか?
そもそもフルタイムって、会社によって違うよね?
週2-3日で1年間じゃダメなの?
などなど
この回答は、行政によってルールが異なる、となります。
例えば、デルタのある川崎市幸区は、フルタイムは会社ごとの決まりに準ずる(1日7時間でもよい)、週2-3日で1年間の経験で実務経験は取得できません。
また、埼玉県の川口市では、半年間で840時間以上と時間で決まっていたり。熊谷市では840時間以上の実務経験を六か月以上の期間をかけて取得しても良いとされています。
開業地域の行政ルールに準ずるので、開業に動く前に必ず確認しましょう。
飼養経験での開業をお勧めできない理由
動物管理責任者の認定資格には、1年以上の飼養経験での取得する方法もあります。
これはワンちゃん(自分の犬でもよい)の飼育に関する記録を残しておき、その内容を提出するものです。
(フォーマットなどは各行政に確認してください)
飼養経験での認定は、期間はやや長いですが、どこかに通う必要もなく、費用もかからず楽ではあります。
ただ個人的に飼養経験で開業資格を得ることは推奨しません。
なぜなら「他人のワンちゃんのお世話をする」という経験が積めないからです。
開業する人の中には、自分が犬を飼ったことがあるから、ペットホテルぐらいできる、と考えている方がいますが、これは大きな間違いです。
自分の子は毎日一緒にいて、性格や癖、何を怖がり、どういう遊びが好きなのかよくわかっています。
しかし、他人のワンちゃんはそういったことをイチから調べなければならず、その過程で何か問題があったら、あなたの責任になります。
今の子を迎えたときも、最初は家具を壊したり、柵を越えたり色々大変ではありませんでしたか?
他人の子を預かるということは、その経験を毎日繰り返すことになります。
ワンちゃんの預かりを行っているお店では、初めての子にどういう接し方をすればよいか分かっているので、飼養経験でなく実務経験での認定をおススメします。
最後に、実務経験にかけるオーナーの想い
ここまで実務経験の取得方法ごとのメリット、デメリットを書きました。
ひとつ忘れないで欲しいのは、行政が実務経験を開業に際し義務化したのは、それくらいの経験がないと開業は難しいと判断しているためです。
以前は簡単に開業できるために不幸になったワンちゃんがたくさんいました。
経験の浅い人が開業した店舗は、安全管理や環境整備が不十分で、ワンちゃんが怪我をしたり、脱走したりと問題が多く発生していたため、令和元年の愛玩動物に関する法律の改正の際に、実務経験の義務化が決まりました。
開業したい人の中には、なるべく早く開業したい、楽に開業したいと考える方もいますが、犬のためを考えるのであれば、多少大変でもワンちゃんを安心・安全に預かれるスキルを持って開業して欲しいと考えています。