2019/11/15
お困りの飼い主様が多い”涙やけ”
涙やけとは、何らかの原因で涙が常時出てしまい、それが原因で目の周りが赤茶色に変色してしまう症状(?)のことを指します。
涙やけ自体が大きな問題になることはありませんが、常時目の周りが濡れている状態は衛生的にはよくなく、別の病気を引き落とすこともあります。
何よりせっかく被毛の白い子が目の周りだけ赤くなってしまい、見た目が痛々しくなることを気にされる飼い主様が多くいらっしゃいます。
原因がわからない場合がある涙やけ
涙やけの何がやっかいかというと原因がはっきりしない場合があることです。
涙があふれてしまう主な原因は以下のようなものがあげられます。
1.まだ涙点や鼻涙管が発達しておらず、生産量が排泄量を上回ってしまう場合
2.老廃物で鼻涙管が詰まり、生産量が排泄量を上回ってしまう場合
3.涙点の場所が浅く、排泄しにくい構造をしている場合
4.炎症を起こしている場合
5.眼輪筋が未発達な場合
(【獣医師執筆】犬の涙やけの原因は? 自宅でできる涙やけ対策・予防法まとめ より引用抜粋)
ここに書かれているように原因がはっきりしているものは対処ができます。
涙管洗浄やマッサージ、異物や逆さまつげの場合はそれを取り除けば改善されます。
一方で、これらの対処をしても治らない、獣医師の先生に診てもらっているが、原因がはっきりしないというケースも多々見受けられます。
腸内環境が鍵?フード変更による涙やけの改善
そんな原因のわからない涙やけですが、お客様からもよく聞くのは「フードを変えたら改善した」とのお声です。
一件二件であれば偶然かとも考えていましたが、結構フードの変更により涙やけが改善される、という話をよく聞きます。
ただ、ある子には効果があっても別の子には全く効果がない、むしろひどくなったといった話も聞きます。
当店のお客様の中にも涙やけで困っていらっしゃる方がいたので、調べてみました。
まず、分かったのはフードで涙やけが改善されるケースはあるが、何が原因で改善されているかは科学的に証明されていないということです。
添加物が原因といった記事もいくつか見かけますが、これも証明はされていません。
そんな中、2019年10月のペット栄養学会誌におもしろい論文が発表されていました。
腸内環境の改善が涙やけの改善につながるのではないのかというものです。
犬の腸内環境改善を謳うフードが最近発売されておりますが、これを与えると涙が外部に溢れる量が減るそうです。
この研究がしっかりしているところはきちんと再現性を取っているところです。
涙が増えるフードAと涙が減るフードBを用意して、それぞれを2週間づつあげて、Aだと悪くなる、Bだと良くなる、ということを調べ、再現性も確認しています。
少し話はそれますが、この再現性ということが研究ではとても重要になります。
私を含めた一般消費者は、涙やけを改善したい!と思い、別のフードを試してみます。
そしてそのフードを食べ始めてから涙やけが改善すると、「このフードは涙やけに効果がある」と考えます。
しかし、偶然フードを食べ始めた時期に涙やけが改善した可能性もあります。
例えば、花粉などのアレルギーが原因なら季節によるもの、トリミングに連れて行ったときに逆さまつげを抜いてくれていたのが原因だったのかもしれません。
もし本当にこのフードに効果があることを調べたければ、一度フードを戻してまた悪化するか、再度フードを与えて改善するかなどを調べなければなりません。
この研究は1匹の犬に対して行われたものですので、他の犬にも適用できるデータなのか、または腸内環境の何が鍵なのかはまだはっきりしていませんが、研究が進むにつれてこのあたりのことが分かってくるかもしれません。
そうすると多くの飼い主様を悩ませている涙やけがなくなってくれるかもしれませんね。
参考文献:ドックフードの変更によりイヌの涙やけ改善が認められた一例 小泉 亜希子, 栗原 里奈, 中山 みずき, 熊谷 安希子, 増田 健一, 大辻 一也 ペット栄養学会誌 2019 年 22 巻 2 号 p. 95-100
↑上記文献はJ-stageで無料で閲覧できます。
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